二宮清純の視点

二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線

第1回 パラスポーツ強化のサポートを

~オリンピック・パラリンピックは「三位一体」で~(1/3)

シームレスなオールジャパン体制を築くべきと語る馳浩大臣

 今年10月の内閣改造で、文部科学大臣に馳浩氏が就任した。馳氏は遠藤利明東京オリンピック・パラリンピック大臣とともに、新設されたばかりのスポーツ庁創設に尽力してきた。2020年東京オリンピック・パラリンピック成功のため、スポーツ庁は各関係省庁との連携や、日本オリンピック委員会(JOC)、日本パラリンピック委員会(JPC)、日本スポーツ振興センター(JSC)との適切な役割分担が重要である。オールジャパン体制での結束力が求められている今、リーダーシップ発揮を期待される馳文部科学大臣を直撃した。

伊藤
:今月のゲストは馳浩文部科学大臣です。今回は大臣室でインタビューさせていただきます。

二宮:プロレスラーとして新日本や全日本のマットで活躍された馳大臣の部屋だけあって、WCWインターナショナルヘビー級チャンピオンのベルトが飾られています。チャンピオンベルトが置いてある大臣室なんて、あまりないんじゃないでしょうか。

:花とチャンピオンベルトでお客さんをお迎えしています。

二宮:まさにおもてなしですね(笑)。ところで、オリンピック・パラリンピックが東京にやってくるわけですが、オリンピックはもちろんパラリンピックを成功させてこそ、「2020年は成功した」と言えるんじゃないでしょうか。まずは予算のお話からお伺いしたいと思います。パラリンピックもスポーツ庁の管轄になったわけですが、JSCの中から配分されると?

:はい。基本的にはスポーツ庁から政策の一元化をしたコントロールタワー、実施機関としてJSCがある。スポーツ庁の中にはオリンピック・パラリンピック課もあれば、健康スポーツ課の中には障害者スポーツ振興室もあります。実施機関であるJSCに情報を下ろして、予算を配分する。こういう1つの大きな流れを考えております。その方が外から見ても、わかりやすいですからね。

パラリンピックの目標設定について訊く二宮清純伊藤:透明性が大事ですね。

:あまり大きな声では言えませんが、JOCにおいて不正経理やガバナンスの問題を指摘されることが多々ありました。やはり公的資金の流れは見えるようにしておかなければいけない。当然、使ってどうだったかという評価も必要ですし、その使い方が公平公正でなければいけないです。

二宮:成果を求めることがイコールメダルの獲得数ということにはなりませんが、目標値といいましょうか。オリンピックに関しては遠藤大臣が「メダル総数80個以上」と発言されています。パラリンピックに関しては、どういうご予定でしょう?

:設定してもらおうと思っています。そうでなければ張り合いがないじゃないですか。ただ達成できるかどうかは現場の頑張り次第だとしても、現実的ではない目標設定は避けてほしい。これまでと現在の世界のレベルを踏まえて、強化すればここまでは引き上げられる。そういう体制をとった上で、数値を設定するべきです。そこは戦略的にも詰めてやってほしいですね。


【すべてを一元化する必要はない】

二宮:パラスポーツは、以前まで厚生労働省の管理下にあったわけですが、パラスポーツの中でのエリートスポーツ、つまりトップスポーツに関しては、スポーツ庁の方に移管されました。将来的にはパラスポーツそのものがスポーツ庁に引っ越しをするという流れなんでしょうか? もしくは、これからもトップパラアスリートと一般の方とはスポーツ庁と厚労省に分けて管轄すると?

:僕は将来的にも今のままで連携をしながらやっていく方が良いと思っています。パラスポーツのトップスポーツの部分では一体化を図った方がいいでしょう。パラリンピックにおいては、健常者と同等にドーピング教育もしなければいけませんし、日常的にもスタッフが必要です。大会時のマルチサポートセンターも残しておくべきですし、ナショナルトレーニングセンター(NTC)にしても、一体的なものにしたいですね。

パラスポーツの選手の多くもNTCの共用を望んでいる伊藤:NTCの共用はパラスポーツの選手の方も望んでいると聞いたことがあります。

:そうは言っても、パラスポーツは、スペシャルオリンピックスもあれば、デフリンピックもある。重度障がい者のスポーツもあります。当然、レクレーション的なものもあるわけですから、そうするとリハビリであったり、医療的な支援を抜きには考えられない。パラスポーツ全てをスポーツ庁に持ってくるというのは、逆に非効率的だと僕は思うんです。

二宮:医療行為などが必要ということになれば、そこはやっぱり厚労省の方が知見や経験の蓄積があるということですね。

:僕は視察にも行きましたが、所沢に国立障害者リハビリテーションセンターがありますよね。あそこには重要な役割があると思う。現場でパラスポーツに関わるようなリハビリの関係者と、国立スポーツ科学センター(JISS)にいた者が交流したり、協力し合う方が意味があると思っています。

二宮:なるほど。全部が全部、一元化するのではなくシームレスな関係にするということですね。

:だから縄張り争いのようになってはいけないと思いますね。そうはいっても、パラスポーツのトップレベルは、これは競技力強化と一体の方が、意味があると考えています。そこはうまく調整していきたいですね。

(第2回につづく)


<馳浩(はせ・ひろし)>
1961年5月5日、富山県生まれ。高校入学後にアマチュアレスリングを始め、3年時には国民体育大会で優勝。専修大学時代にはレスリング部の主将を務める。卒業後は、母校の星稜高校(石川)で教員を務める傍ら、84年のロサンゼルスオリンピックに出場。翌85年にはジャパンプロレスに入門し、プロレスラーに転向した。87年からは新日本プロレスの中心選手として活躍。95年、参議院議員に初当選した。2000年、衆議院議員総選挙に立候補して当選。13年10月より、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会実施本部本部長を務める。今年10月から文部科学大臣に就任した。


(構成・杉浦泰介)

#1パラリンピック競技の強化
#2パラスポーツのサポート
#3「三位一体」で大会成功を目指す
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二宮 清純(にのみや せいじゅん)

スポーツジャーナリスト。
1960年、愛媛県生まれ。オリンピック、サッカーW杯、メジャーリーグ、ボクシング世界戦など国内外で幅広い取材活動を展開。テレビのスポーツニュースや報道番組のコメンテーターとしても活動中。主な著書に「スポーツ名勝負物語」(講談社現代新書)、「プロ野球の一流たち」(講談社現代新書)など。障害者スポーツでは矢野繁樹、成田真由美、国枝慎吾などのノンフィクションを執筆している。

[HP] SPORTS COMMUNICATIONS ~二宮清純責任編集~


"挑戦者たち"への取材にあたって

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