編集長コラム

障害者スポーツのおもしろさを求め、現場へ

第21回 「モバチュウ」の意義を伝えてくれた一本の電話

 パラリンピックは世界最高峰の競技大会ですが、実はわが国には、「ジャパンパラ」という国内最高峰の大会があります。日本障害者スポーツ協会日本パラリンピック委員会(JPC)と各競技団体が主催する大会で、現在は陸上、水泳、アーチェリー、スキーの4競技で行われています。これまでSTANDでは、ジャパンパラのいくつかの大会のインターネット生中継(モバチュウ)を行ってきました。そこで今回は、2009年7月20日、大阪で行なわれた「ジャパンパラ水泳競技大会」での出来事についてお話します。

 大会の数日後、会社に一本の電話がありました。50M自由形に出場した愛知県在住(当時)の竹内 那苗(たけうち ななえ)選手の母親、香世子さんからでした。
「中継していただき、本当にありがとうございました! 自宅に戻ってから、パソコンで録画を観ました。まるで私の娘がオリンピック選手みたいに見えて、感動してしまいました。こうして中継をしていただくと、障害者の大会ではなく、一流スポーツの大会のようですね」
 そう元気にお話される香世子さんの声に、私も嬉しさがこみ上げてきました。そして、香世子さんはこう続けました。
「あの映像をビデオにして譲っていただけないでしょうか」

 当時、竹内選手が出場したレースには、彼女とパラリンピック出場経験のある男子の2人のみでした。性別の違いもあり、2人のタイム差はかなり大きく、竹内選手は一人取り残された状態になったのです。「モバチュウ」では、男子選手がゴール後も竹内選手を映し続けました。それをパソコンで見た香世子さんには、まるで竹内選手の独占中継のように思えたのです。それで、なんとか保存したいと思い、思い切って問い合わせをしたというのです。私は「娘がオリンピック選手のようだった」という言葉に胸が詰まる思いでした。


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伊藤 数子(いとう かずこ)

挑戦者たち編集長
/NPO法人STAND代表理事

新潟県生まれ。1991年に車いす陸上を観戦したことがきっかけとなり、障害者スポーツの振興に携わるようになる。未来に向けて次代の選手・ファンを拡げていくために、障害者スポーツのスポーツとしてのおもしろさを伝えるウェブサイト「挑戦者たち」、障害者スポーツ競技大会のインターネットライブ中継「モバチュウ」、障害者スポーツ体験会などの事業を企業・団体と協働で展開している。2012年ロンドンパラリンピックでは日本選手たちの挑戦を伝えるウェブサイト「The Road to London」を開幕1年前に開設した。著書に「ようこそ、障害者スポーツへ -パラリンピックを目指すアスリートたち-」(廣済堂出版)など。

ロンドン2012パラリンピック 日本選手たちの挑戦 「The Road to London」

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