応援メッセージ


真っ暗な暗室の中で作業をしたり食事をする経営者研修に出たことがある。目の不自由な障害者の日常を実感させる研修であったが、真っ暗闇では何もできず不安だけが募った。目の不自由な人たちが我々の手をとってリードしてくれたが、改めて彼らの能力に驚いた。これに続いて経営のダイバーシティーを議論したが、経営者たちが一層真剣に踏み込んで議論したことを覚えている。
障害者アスリートたちが与えられた能力の限界に挑戦するパラリンピックは、多くの人々に人間の能力と意思の力の素晴らしさを認識させ深い感動を呼ぶ。ハンディキャップによるルールセッティングは、さまざまな肉体条件の違いを乗り越えて、ベストを尽くし、パフォーマンスを競うための人類の知恵と工夫だ。ゴルフだって、ハンディキャップ・ルールによって単なるスコアの争いではない、多くの効用を生む場になっている。職場にもこの考え方と知恵を持ち込むべきだと思う。ダイバーシティーは、これからの20年で1000万人もの労働力人口が減る日本にとっては最重要課題だ。
ロンドン大会は、障害者アスリートたちが夢を追う場であるとともに、多くの経営者や働く人たちの目を啓く場になって欲しいと思う。
<有馬利男(ありま・としお)プロフィール>1967年国際基督教大学教養学部卒業。同年富士ゼロックスに入社。総合企画部長、米国ゼロックス・インターナショナル・パートナーズCEO、富士ゼロックス代表取締役社長を経て、2008年6月から富士ゼロックス相談役特別顧問となる。社長在任時に経営改革を推進する一方、「企業品質」コンセプトを打ち出すなど、CSR経営に尽力した。2007年7月国連グローバルコンパクトボードメンバー、2010年10月NPO法人ジャパン・プラットフォーム共同代表理事に就任するなど、社会的な活動を広げている。