二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2016.10.06
第1回 スピーディーかつ迫力あるスポーツ
~第一人者が創る電動車椅子サッカーの未来~(1/4)
今年4月、日本障がい者サッカー連盟が誕生した。日本障がい者サッカー連盟は国内にある7つの障がい者サッカーの団体(日本アンプティサッカー協会、日本CPサッカー協会、日本ソーシャルフットボール協会、日本知的障がい者サッカー連盟、日本電動車椅子サッカー協会、日本ブラインドサッカー協会、日本ろう者サッカー協会)を統括する日本サッカー協会の関連組織である。その記念すべき設立会見に電動車椅子サッカーの選手を代表して登壇したのが、北沢洋平選手だ。この競技は、電動車椅子をジョイスティック型のコントローラーで操作して行うサッカー。北沢選手は日本代表として過去2度のW杯に出場したトッププレーヤー。今も第一線で戦っている第一人者に、来年のワールドカップや競技の普及にかける思いについて訊いた。
伊藤数子(「挑戦者たち」編集長):今回のゲストは電動車椅子サッカーの北沢洋平選手です。9月3、4日に行われた第8回パワーチェアーフットボールブロック選抜大会では関東ブロック選抜として出場されました。大会では見事に優勝とMVPを獲得。おめでとうございます。
北沢洋平:ありがとうございます。4連覇を達成することができました。関東選抜からは日本代表候補選手も多く選ばれていますので、実力を発揮できてよかったです。日本障がい者サッカー連盟の北沢豪会長にも決勝戦を観戦していただきました。
二宮清純:電動車椅子サッカーはその名の通り、電動車椅子に乗ってするサッカーです。手動の車椅子では移動できない比較的重度の障がいを持った選手がプレーしていることが特徴ですね。先ほど映像でも観ましたが、ターンの動きなどはとてもスピーディーで迫力がありますよね。
北沢:ありがとうございます。ちなみに速度は国内では6km/h、10km/hと大会によって制限されるスピードが分かれています。それだけでスポーツが違うという感覚はありますね。ちなみに国際大会では10km/hに定められています。小さなコートの中でプレーしているので体感速度はもっと速いですね。
二宮:選手同士がぶつかったときは危ないのでは?
北沢:その時は音がすごいですね。でも基本的に故意のチャージは反則となりますので、そこまで危険なことはないです。
二宮:「足で蹴らないサッカー」とも言われていますが、その車椅子につけているバンパーのような部分で蹴っていましたね。
北沢:フットガード(前方に付けているバンパー)と言います。ドリブルやシュートはここに当ててボールを動かしますし、サッカーをする時にだけ取り付けるので、まさにスパイクみたいな感覚ですね。
【ルールはフットサルに近い!?】
伊藤:次は基本的なルールを教えてください。
北沢:はい。ピッチは主に体育館のバスケットボールコートを使用して行います。人数はGKを含めて4対4、男女混合のチームで戦います。幅6メートルのゴールを目指して、その得点数を競い合います。
二宮:障がいごとのクラス分けはあるのでしょうか?
北沢:電動車椅子サッカーではPF1、PF2の2つにクラス分けされています。PF2の選手はPF1の選手より障がいの程度は軽いのですが、ピッチに最大2人までしか出られないルールがあります。日本では僕も含めてPF1の選手が多く、PF2は数えるぐらいしかいません。
伊藤:使用するボールはすごく大きいですが、サイズはどのくらいでしょう?
北沢:直径32.5センチのボールを使用しています。
二宮:サッカーボールとは1.5倍ほどの差がありますね。電動車椅子用の特別ボールですから、お店でもなかなか手に入らないのでは?
北沢:でも最近はオンラインでも安く買えるんですよ(笑)。
二宮:そうなんですね。他のルールに関してはどうでしょうか。オフサイドはありますか?
北沢:ないですね。他に違いといえばタッチラインにボールが出た場合、スローインではなくキックインになります。ルール的にはフットサルにすごく近いと思います。
二宮:男女混合でプレーするそうですが、男女間でテクニックに差はない?
北沢:それはあまり感じませんね。日本代表にも女性の選手は過去に選出されています。逆に女性の方が土壇場に強い気がします。今回の関東ブロック選抜でも、結構助けられましたね。すごく頼もしいです。
(第2回につづく)
<北沢洋平(きたざわ・ようへい)>
1984年3月14日、東京都生まれ。6歳の時、筋ジストロフィーと診断される。小学5年で電動車椅子サッカーを始める。95年に東京のクラブチーム・レインボーソルジャーを結成し、主力選手として日本選手権5度の優勝を経験する。日本代表では2007年日本大会(4位)、11年フランス大会(5位)と2度のW杯に出場し、チームの主力としてプレーした。13年には第1回APOカップ(アジア太平洋オセアニア選手権)で優勝。PwCあらた有限責任監査法人に所属。
※競技の映像をこちらから見ることができます。(映像/日本電動車椅子サッカー協会)
(構成・杉浦泰介)